
扉がきしみながら開くと、中からほんのりとした温もりが漂いました。うめき声が再び聞こえますが、今度はどこか安心したような、控えめな響き。エマが耳を寄せると、干し草のような甘い香りに、ほんのり花の匂いが混じっていました。レオが声を潜めて「3…2…1…」と数え、そっと扉を押し広げます。
そして二人は息をのみました。
中には無数のハチたちが舞っていたのです。威嚇するような動きではなく、まるで何かを守っているかのように、穏やかで規則的な動きでした。黄金色の体が空中を流れるように動き、その奥に隠された“秘密”を包み込むように。エマとレオはそっと後ずさり、ハチたちの穏やかな流れを見守りました。
床には藁や壊れた木箱が散らばり、隅のほうで小さな影が震えています。懐中電灯の光に、つぶらな目と小さなピンク色の鼻が浮かび上がりました。よろよろと立ち上がろうとしては、また倒れてしまいます。
