
レオが優しく声をかけながら近づくと、ハチたちはまるで理解しているかのように彼の動きを見守ります。壊れた木箱をどかすと、中からボロ布に包まれた小さな巣のような場所が現れました。エマは静かに膝をつき、手を差し伸べます。犬は不安げに鳴きながらも、その様子をじっと見つめていました。
外では近所の人たちが集まり始めました。誰かがタオルを持ってきて、誰かがキャリーケースを差し出します。手は震え、目は見開かれ、誰もが信じられないという表情。森に棲む野生動物の噂は本当だったのか――そう思った瞬間、現実が静かに形をとりました。
レオが震える小さな体をタオルに包むと、ハチたちは穏やかに羽音を響かせ、まるで守るようにその周りを飛びました。そこにいたのは、生まれたばかりの子犬。白い足は泥で汚れ、体には小さな傷。そして片方の耳には、ほんのりとハチミツがついていました。
ハチたちはその子犬を閉じ込めていたのではありません。守っていたのです。寒さと雨から、危険から。誰も近づこうとしなかったあの小屋は、恐怖の場所ではなく、小さな命を守るための温かい避難所でした。
